職業奉仕委員会

   猿田副委員長の卓話 1
   
 職業奉仕について
                                                   RI第2790地区職業奉仕地区委員
                                                              猿 田 正 城
  銚子RCの猿田と申します。次年度、地区職業奉仕委員を務めます。よろしくお願いいたします。
ただ今、白鳥カウンセラーから、職業奉仕について的確なご指導を頂きました。これからの私の話は、まったくの余談であります。日頃考えていることを少々お話いたします。
  各クラブとも職業奉仕の委員長になられる方は、経験豊かで指導的立場の会員であります。その知識は十分にお持ちのことと存じます。しかし、重要なことは、それを各クラブの会員に、どのように伝え理解させ実践に導くかであります。私ども地区委員会はそのお手伝いをすることが役割だと思います。
  島崎藤村の小説【夜明け前】は「木曽路は全て山の中である」という文で書き出します。
山の中とは山林の多い所と理解します。しかし、読み返すと、山の中とは文明の恩恵のない所という意味にもなります。そして更に読むと、山の中とは、古い因習の中で生きる人たちのことであると気がつきます。職業奉仕はロータリーの基本となる言葉です。多くの人々の話を聞き、くり返し学び、その意味の深さを知ることは、より高いロータリアンとなるために大切なことであります。
 
  私は、職業奉仕を四つの柱で考えています。
 
第1は、職業とは何かということであります。このことを日本ではじめて考えた人が江戸時代初期におりました。鈴木正三という禅僧であります。彼は職業とは仏様の働きを具現化したもので、一人ひとりの職業は、仏様によって授けられた尊い仕事である。だから、自分が受け持つ仕事を一生懸命に果たすことが、仏様を助けることになり、即ちそれは仏道の修行となるのだ。その結果、人は成仏できると説きました。
  かごに乗る人、かつぐ人、そのまたわらじを作る人。人が皆同じ職業に就いていたのでは世の中が成立しません。社会を構成する上で必要な職業を一人ひとりが分担し合い、それらを遂行することで豊かな人間社会が成立するのです。自分の職業は選ばれて、与えられた天職であるという自覚に立って、それに感謝し、責任を果たすことが職業奉仕の上での大切な認識であると思います。
 
第2は、倫理を重んじる職業人となることであります。倫理と道徳は同じ意味ではありません。道徳とは人間社会の秩序を維持するために、人間が時間をかけて作り上げてきた生き方の手本であります。ですから、時代や地域によっても相違が生じます。
  これに対し、倫理とは、この世に人間として生きる以上、正しい生き方として神の定めた道理であります。規則や約束を守ること。嘘、偽りを言わない。そしてしないこと。生きているものへのいとおしさ、愛の心が倫理であります。
  それはつまり、真善実なるものへの憧憬であります。耐震偽装事件や、牛肉偽装問題からはじまり、職業倫理欠如のニュースが今日もなお次々と報じられています。
  私たちロータリアンは、自ら倫理を尊重すると同時に、他への働きかけにも力を尽くす必要があると思います。
 
第3は、職業奉仕上のあり方であります。職業に専念し、大きな利益を得て、その利益を社会のために役立てることが職業奉仕の目的ではありません。
  人は生きるために働いているのではなく、働くことによって生きる喜びを与えられているのです。働くということは、利益を得られるということよりも、自分は、社会のために役立っているという満ち足りた思いになることが大切だと思います。
  ですから、職業に従事するに当たって大切な心得は、自分の利益を考えると同時に、相手の利益のことも考えることであります。
  江戸中期の「心学」の開祖、石田梅岩は商いの心得として【先も立ち、我も立つことが肝要なり】と述べています。
 
第4は、職業奉仕の意義の認識であります。なぜ職業奉仕が人生で大切なのかであります。
  私は銚子市にある田舎の神社の宮司をしています。昨年のこの場では、神職の体験を主に話をさせて頂きました。
  毎年、拝殿向拝の長押にツバメが巣を作ります。昨年は、そこから雛鳥が落ちて賽銭箱に入ってしまいました。すると、一匹の蛇が、その雛鳥をくわえ出てきました。私は竹竿で裏参道の竹林へ運びました。数日してその蛇が車に轢かれて死んでいるのを発見しました。するとまた数日して、一人の女性が蛇を轢いてから仕事に集中できない。何か不安でたまらないと相談に来ました。結局お祓いをすることになりました。
  祓いとは、人間の犯した罪や穢れを神の力で取り除く神事であります。彼女は晴々とした顔で帰りました。
  鳥が死んだのも、蛇が轢かれたのも、私がお祓いをしたのも、私の意思とは関係のない不思議な力の働きであります。人生には何が起きるか予想がつきません。しかし、あらゆる場面に於いて、その人間がどう考え、どう行動するかは、その人間のあり方で決定できます。職業奉仕を学ぶ意義はここにあるのです。
  人生の価値は、その人間がどれだけ社会のために貢献したかであります。社会のためになる職業を持ち、常に創意工夫し、質を高め、倫理を重んじて、その責任を果たすことで信頼と尊敬が得られます。それは価値ある人生を送った証であります。
  以上で私の話を終わります。ありがとうございました。